こんこん

斉藤康次(こんす)です。良い感じの水彩の人物画を描くためのブログ。

ターナー展4-ヴィニェット-

ターナー展を観ていて、ターナーの作品は色数が少ないなと思った。
赤系統の色が少ないんだと思う。赤や紫もあまり使わないし、赤みの深い青もあまりなかった。実際の景色もそうだったのだろうけれど、スケッチしてアトリエで作品を制作していたのを考えたらターナーもこうした色使いを好んだのだろうなと思う。


そうした嗜好から1歩離れた作品群がヴィニェットだと思う。
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ヴィニェットというのは書籍の挿絵の形式のひとつだそうだ。挿絵のなかでも枠取り線をもたない小さなものを示すものらしい。
実際展覧会で観た原画はとても小さく、これは図録で観るよりも作品を直で観たほうがずっといい。
ターナーの作品は当然ながら2世紀以上前に描かれていたものなので、時代を感じるなと思って観ていたけれど、これを観たときは現代のイラストにタイムスリップしたような感覚だった。


この挿絵が添えられた作品は、トマス・キャンベルという詩人の詩集らしい。キャンベルは1777年生まれ。ターナーの2歳年下になる。古典主義の形式を残しながら、「ロマン主義的な情熱さを備えた感傷的で愛国精神に富んだ詩」ということで(ターナー展図録より)、ターナーとは気が合っただろうと思う。キャンベルが金銭面で困った際には自分の挿し絵を200ギニーで買い戻して援助したりしている。


これが描かれたのは1835年前後。40年代に入るとターナーは晩年にはいり抽象的な作品を制作するようになるので、その少し前の作品ということになる。
ターナーの作品は一目でターナーが描いたものと分かるほど、どんな風景画もターナーの独自性が感じられる。画一的でもあると思っていたのだけど、今回はターナーの引き出しの多さに驚かされた。


上で載せた絵は「バルト海の戦い」の詩にそえられたもの。バルト海の戦いは1801年のフランス革命戦争の海戦。イギリスがデンマークを破ったものなんだとか。
詩集の「ハリケーンが太陽を覆い隠すように」という箇所に応じたものだそうで、ターナーとキャンベルのロマン主義が合わさっていてとても良かった。正直今回の展覧会で一番好きな絵。


ターナー展ではこのヴィニェットが15点前後、またそのなかで版画になっている作品も合わせて展示されている。重ねて言うけれど、原画がスバラシイ。是非観に行ってほしいと思う。